飛び去りながら凝結する光景
首都高速道路で見える都市の光景は多くの人にとって既知で、ただ目の前を刹那的に通過する断片にすぎない。われわれは思いのほか同じようなものにしか反応しないものだ。個人的な視覚的興味や、かたち、色への嗜好、シンボルとして際立つ建造物などをなんとなく見ている。いっぽう高速で走る車の中から凝視するまなざしを四方へ向け続けるのは、肉体と精神に極端に負荷がかかる。ただカメラという機械は、写真を生み出す過程でそれを可能にしてくれる。
井田宗秀は、高速を走りながら意識と無意識のあいだで漠然と自覚していた感覚を、実際に首都高を走行しながら写真にすることで視覚化した。その結実が写真集『EXPRESSWAY』で、高度な印刷プロセスを経て精緻な画面からあたかも飛び去りながら凝結したような光景が立ち上がってくる。
展示としての「EXPRESSWAY」では、意識と無意識のあいだで往来する井田の感覚を平面に還元された写真から3次元へ浮上させる試みをする。井田が生み出す強度をたたえた鋭利な都市の断片が展示空間で動き出すさまをぜひご覧いただきたい。
(池谷修一:写真編集者/キュレーター、本展を展示構成)
【開催概要】
展覧会名:「EXPRESSWAY」
会期:2024年6月29日(土)~7月6日(土)
開催時間:11:00〜19:00(会期中無休、最終日は17:00まで)
会場:AL(東京都渋谷区恵比寿南3-7-17)
展示構成:池谷修一
オープニングレセプション 6月29日(土)17:00〜20:00
トークイベント 7月5日(金)19:00~20:00
出演:佐々木誠(映画監督、映像ディレクター)、井田宗秀、池谷修一
※レセプション・トークイベント共に予約不要・参加費無料
【書籍販売】
写真集『EXPRESSWAY』
A4変形 カラー112ページ コデックス製本
※会場にて先行発売 7,700円(税込)
【プロフィール】
井田宗秀(いだ・むねひで)
1978年東京都生まれ
12歳より写真に興味を抱き独学で学ぶ。日本大学生物資源科学部卒業。イメージスタジオ109勤務、写真家管洋志師事後、2003年独立。多くのクライアントワーク撮影を手がける傍ら、積極的に作品発表を行う。主なテーマは「広義的な人の行いとその環境」「感覚の視覚化」。(公社)日本写真家協会会員
URL:https://ida.viewbook.com/
Facebook: https://www.facebook.com/idapon7
Instagram: https://www.instagram.com/idapon7
主な個展
2006年 「祈り」~BALI神々と生きる民~(カフェフランジパニ 六本木)
2010年 奄美皆既日食音楽祭写真展 (ギャラリールデコ 渋谷)
2017年 「BREAKINGSCAPE」(銀座・大阪ニコンサロン )(東川賞ノミネート)
2022年 「Road to high」(Maharita 逗子)
「The shape of sound」(逗子アートフェスティバル)
(音楽家no.9との共同作品)
2010年 『Party in Legend』発行,TODOROKI
2024年 『EXPRESSWAY』私家版